シリア内戦

シリア内戦

著:安武塔馬

書店発売日:2018年12月14日
定価:2,400円+税
ISBN:978-4-87177-348-5

2011年3月6日、アサド政権打倒を呼びかけた落書きを理由に少年15人が秘密警察に逮捕され、拷問を受けた。同15日、首都ダマスカス旧市街で、抗議のデモが起こる。
以降、抗議デモはシリア全土に飛び火した。当初、アサド政権と反体制派の戦いであったところに、ISILをはじめとするジハーディストが登場し、米国を含む有志国連合が「対テロ戦争」としてそれに向き合うことになる。さらにはサウジアラビアとイランの代理戦争、トルコとクルドの対立なども、シリア内戦に組み込まれることになった。
国際社会はこの紛争を止めることができず、やがてはロシアも参戦し反体制派は離合集散を繰り返す。シリアの国民は、毎日のように殺害され、難民として周辺諸国に逃れている。
なぜ、シリアという国はこのような状態になってしまったのか。ISILの勢力が削がれ、反体制派はイドリブ県に追い詰められてはいるものの、仮にアサド政権が勝利したとして、大多数の難民は帰国することができないだろうし、クルド勢力は東部を実効支配している。
この先シリアはどうなるのか。本当の意味で、シリアが元の統一国家に戻る道筋は、全く見えてこない。本書では、この複雑な構図を時系列で解きほぐし、レポートしていく。
第2次大戦後最悪の人道危機がなぜ、どのように起きているのかを理解するための1冊。


目次
第1章 幕開け
第2章 トルコ、サウジアラビア、カタール、米国─アサド政権打倒をめざす国々
第3章 ヒズボッラーとイラン、ロシア─アサド政権を支える外部勢力
第4章 軽量級の調停者、重量級の脇役─国際連合とイスラエル
第5章 民衆蜂起から宗派紛争へ
第6章 転機
第7章 反体制派再編・シリア国民連合の誕生
第8章 ISIL登場
第9章 ヒズボッラーの本格参戦
第10章 化学兵器問題
第11章 イスラム戦線結成
第12章 カリフ国の出現─
第13章 第2戦争開始
第14章 「征服軍」、イドリブ征服
第15章 ロシア参戦
第16章 パリ同時多発テロ事件と対ISIL大連合形成の動き
第17章 行き詰まる和平協議
第18章 停戦発効と崩壊


前書き
 シリアでなぜこのような内戦が起きているのか─なぜそれがいつまで経っても終わらないのか。
 本書の執筆の目的は、そんな疑問に少しでも答えることである。
 シリア危機のはじまりから2016年春までに起きた出来事の流れを整理し、様々な角度から観察し、分析する。
 扱う期間は長い。シリア危機がはじまって以降本書がカバーする6年間だけではなく、10年、20年、時には100年も時間を遡って説明が必要な話もある。
 扱う国の数は多く、地域も広い。シリア危機はそもそもの発生時点から、周辺諸国を取り巻く政治環境の急変─いわゆる「アラブの春」─の影響を受けているし、周辺諸国や外国勢力の様々な関与があったから、本格的に内戦化した。なぜ各国は介入したのか、あるいはしなかったのか? それぞれの国の事情にも目を通す必要がある。
 登場するアクターやプレイヤーも多い。当初はアサド政権とシリア反体制派の間の戦いであったところに、ISILをはじめとする無数のジハーディストが絡まってきた。2014年以降は、ISILと米国以下の「有志国連合」の戦い、すなわち「対テロ戦争」という側面が加わった。さらにはサウジアラビアとイランの代理戦争、トルコとクルド人武装勢力の戦争も、「シリア内戦」の一部に組み込まれるようになった。
 本書ではそういった複雑な構図を、基本的には時系列による章立て・構成で、ひとつずつ丹念に解きほぐしていく。
 気の遠くなるような作業だが、本書が、私たちの目の前で進行する「第二次世界大戦以後、最大の人道危機」がなぜ、どのように起きているのかを理解する助けとなれば幸いである。



安武 塔馬 (ヤスタケ トウマ) (著)
ベイルート・アメリカ大学大学院(中東アラブ研究)卒業。1990年からパレスチナ、イスラエル、レバノン、UAEなど中東在住歴は20年を越える。著書に『レバノン 混迷のモザイク国家』(2011)。ジャパンメールメディアで『レバノン 揺れるモザイク社会』(2005~2007)を連載。独自の視点で中東情勢分析を続けている。

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