放射線はなぜわかりにくいのか

放射線はなぜわかりにくいのか

著:名取春彦

書店発売日:2014年1月20日
定価:2,000円+税
ISBN:978-4-87177-322-5

放射線はわかりにくい。それには理由がある。そしてその理由を知らなければ放射線を理解することは難しい。これまでうやむやにされたまま誰も指摘してこなかった諸問題に、専門家である放射線医が鋭く切り込む。

目次

序章
原発事故にじっとしていられない
フクシマの少女の言葉
少しの放射線は心配しなくてもよいのか危険なのか
本書がめざすもの

第1章 フクシマにおける放射線の誤解と混乱
1 避難住民の被曝線量が測定されなかった
2 安定よう素剤が配布されなかった
3 「ただちに健康への影響はない」
4 意味のない数値に振り回される
5 「少しの放射線も危険だ」の言葉に苦しめられる
6 被災者が除染活動に振り回される
7 放射線はなぜわかりにくいのか

第2章 放射線とはなにか
1 用語のおさらい
2 放射線とは電離放射線のことである
3 機械でつくられる放射線
4 放射性物質から放出される放射線
5 崩壊の頻度と半減期
6 放射線のエネルギーとは
7 放射線は種類によって性質がバラバラ
8 紫外線やその他の電磁波の生体への影響
9 放射線に使われる単位

第3章 放射線は人類の幸せにいかに貢献してきたか
1 放射線診断
X線診断の誕生からマモグラフィーまで
コンピューター・トモグラフィー(CT)の登場
血管造影とインターベンション
2 がんの放射線治療
ラジウムが子宮がんの女性を救った
外部照射はコバルトから81 非密封線源治療
中性子捕捉療法と放射線治療への期待
3 核医学
核医学とは
核医学検査の活躍
PET診断
4 放射線の医療以外での利用
ライフサイエンス研究に放射性物質は欠かせない
放射線はさまざまな分野で利用されている

第4章 放射線が人体へ与える影響その1
1 人体影響の最初の過程
DNAの損傷とその修復
細胞死、変異細胞、ガン細胞
放射線生物学的は細胞死を指標にしてきた
放射線によるDNA以外の変化
2 放射線の急性障害
全身被曝における死亡原因
皮膚の急性反応
被曝の影響が後から現れるのはなぜか
3 放射線による臓器の障害
細胞死では説明がつかない
慢性障害は傷跡だとする説
血管障害説
神経組織の障害
4 放射線の分割効果と線量率効果
分割効果
線量率効果

第5章 放射線が人体へ与える影響その2
1 放射線の晩発障害とは
2 放射線による遺伝子変異
3 放射線はガンを増やす
放射線発がんが最もよく調べられてきた
細胞がガン化するまで
ガンが発症するまでの過程
発がんのシナリオはもっと複雑だ
被曝するとガンになるというのは本当か
放射線は複合要因の小さな一つ
3 生まれてくる子どもへの影響
常に曖昧な説明がされてきた領域
奇形と先天異常
妊娠までの被曝の影響
妊娠中の被曝の影響
動物実験から得られる知見
先天性の障害をどう見るか
4 世代を超えた影響と遺伝病
遺伝病とは
遺伝的影響のリスク評価の難しさと問題点
公正な調査が求められる

第6章 内部被曝とは
1 内部被爆の特殊性
アラファトの死のミステリーと内部被曝
外部被曝との違い
トロトラストによる肝臓がんとホットパーティクル
2 バセドウ病の放射性よう素治療で甲状腺発がんのリスクはないのか
3 放射性セシウムは危険なのか
放射性セシウムとは
タリウムシンチグラフィーの全身画像を参考にするなら
カリウム40からの自然被曝を考えれば
チェルノブイリの健康被害を訴える研究者たち
内部被曝の鍵はトラップにある
4 本当に恐いのは
ストロンチウム90
プルトニウム239
5 トリチウムによる内部被曝

第7章 確定的影響と確率的影響
1 これは分類ではなく単なる形容
2 確率的影響という言葉の危うさ
3 確率は容易ににごまかせる

第8章 放射線から身を守るには
1 放射線から身を守る三原則
(1)発生源から離れる(距離)
(2)発生源を遮蔽する(遮蔽)
(3)被曝時間を短くする(時間)
2 放射性物質が飛散する場合
(1)知る
(2)被う(閉じ込める)
(3)逃げる
(4)吸わない飲まない触れない
3 安定よう素剤では住民を守れない
安定よう素剤とは
役所で厳重に保管すべきものなのか
日本には昆布がある
甲状腺の被曝予防に何グラムの昆布が必要か
安定よう素と放射性よう素は競合すると考えるだけでよい
原発事故では長期の予防が必要になる
4 他の放射性物質に対してはうまい予防方法がない
5 被曝してしまった後の治療
放射線腸障害への対処
骨髄障害に対して
放射線による下痢のメカニズム
味噌の効果は
放射性物質を摂取してしまったときなどの対処

第9章 放射線防護の社会的枠組み
1 ICRP(国際放射線防護委員会)とはどのような機関か
ICRPの前身
ICRPの誕生とその性格
国も学者も、反原発団体までもがICRPに依存する
2 放射線防護に関する国際的枠組み
3 行為の正当化、防護の最適化
行為の正当化
防護の最適化
4 公衆被曝と職業被曝の基準値
平常時の職業被曝の個人線量限度
平常時の公衆被曝の個人線量限度
緊急時、および現存被曝状況における基準値
5 自然放射線からの被曝と医療被曝
自然放射線による被曝
放射線診断における被曝の問題
よう素125の永久刺入による治療
非密封放射線源に関連する問題
介助者などの被曝と人体実験ボランティアの被曝
6 内部被曝への対応
被曝線量だけでは何もわからない
内部被曝のリスク評価に関る問題
結局、内部被曝を意味のない数値で規制する

第10章 放射線の単位変更の謎
1 あまりにも強引な変更
2 照射線量の廃止と「空間線量率」という言葉の混乱
3 「空間線量」と被曝線量の混同
4 シーベルトという単位が意味するもの
等価線量
実効線量
実用線量
5 公的記録にはシーベルトを使うべきでない

第11章 少しの放射線は、危険なのか心配ないのか
1 低線量被曝とLNT仮説
LNT仮説とは
ICRPは一貫してLNT仮説を採用してきた
2 LNT仮説に並ぶ別の考え方
しきい値ありモデル
超線形モデル
放射線ホルミシス
3 国際機関の立場
4 ICRPがLNT仮説を採用していなければならない理由
5 フクシマの状況をどう考えるか
国際機関はどのように見ているか
放射線防護は個別に
放射線が一番よくわかっている
何を信じればよいのか

終章
病気に対する抵抗力と被曝による健康被害
なぜ住民は政府の説明に納得できないのか

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