熱帯の森から
森林研究フィールドノート
著:渡辺弘之
書店発売日:2019年12月12日
定価:2,200円+税
ISBN:978-4-87177-351-5
熱帯の林産物と私たちの暮らしはどう関わっているのか。熱帯林のいきものと人々の暮らしをつなぐ博物誌。
目次
消える森林文化と知識
熱帯の非木材林産物
これが非木材林産物?
タウンヤ法での熱帯造林
ミャンマーのタナカ
アフリカ南部マラウィのバオバブジュース
しゃべる樹木 ポホン・ベルビチャラ
淡水のフグ
中国の虫糞茶
キナノキとキニーネ
タイ・ミャンマーの漆器とビルマウルシ林
スマトラ、クルイのフタバガキ科樹木(ダマール・マタクチン)
新潟県山北町の焼畑林業(切替畑・木場作)
ゾウの学校
サルの大学
タイ北部のアセンヤクノキと阿仙薬
赤道をまたぐ
ミミズの土壌耕耘量
スマトラのアンソクコウノキ林と安息香
樹上の節足動物
タイの食用昆虫 ゲテモノ・イカモノ天国
大ミミズの探索
熱帯林の樹上節足動物
東南アジアの樹木野菜
ニシキヘビを食べる
東南アジアのびっくり野菜 ドクダミも野菜
石垣島於茂登岳のサキシマスオウノキ
ギャンブル(闘鶏・闘魚・カブトムシ・コオロギ)
ドリアン 果物の王様
八つ又(八股)のココヤシ
オオコウモリ(ミクイコウモリ)
東南アジアの「青いご飯」
松やに(オレオレジン・ロジン)
儲けそこなった話・ダイアモンド
儲けそこなった話・沈香
インドネシア、スラウェシの黒檀
マルチパーパス・ツリー(多用途・多目的樹木)
マングローブの造成とエビ養殖 タンバック・トゥンパンサリ
東南アジアの放生・花鳥市場
柿板・屋根葺き材料
グラス(仙草)ゼリーと愛玉(愛玉子)
前書き
私の海外渡航はこれまで一二五回になる。その多くは、タイ、マレーシア、インドネシアを主に、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピンなど東南アジア諸国への森林研究のためであった。大学院は、京都大学大学院農学研究科の、四手井綱英教授がおられた森林生態学研究室へ進学した。好きなことをやればいいというので、昆虫好きだったこともあり、研究テーマを「土壌動物の森林生態系での役割」とした。
一九六三年、京都大学東南アジア研究センター(当時)が編成した初めての調査隊、森林調査の隊員に選ばれ、イギリス船籍の貨物船、奉天号で調査道具ともどもタイまで行くことになった。これは本当に嬉しかった。土壌動物への興味はもちろんだが、純粋に東南アジアへ行ってみたかったのである。この時は、タイのカセツァート大学・チュラロンコン大学との合同調査であった。初めての海外渡航で多くの失敗もあったのだが、刺激のある毎日だった。今なら飛行機で飛んで行けるが、二週間の船旅を経てのバンコク上陸、さらにプーケット島でインド洋の海岸に到着したとき、この向こうはインド、アフリカなのだと興奮したことを覚えている。
渡辺弘之(ワタナベ ヒロユキ)
1939年愛媛県生まれ。高知大学農学部卒業。京都大学大学院農学研究科林学専攻修士課程、同博士課程修了。農学博士。京都大学助手・講師・助教授を経て教授。現在、京都大学名誉教授。
日本土壌動物学会会長、日本環境動物昆虫学会副会長、関西自然保護機構理事長、京都園芸倶楽部会長、日本林学会評議員・関西支部長、国際アグロフォレストリー研究センター理事などを歴任。現在、社叢学会副理事長、滋賀県生きもの総合調査・その他陸生無脊椎動物部会長、ミミズ研究談話会会長。日本土壌動物学会名誉会員。
著書に、『アグロフォレストリーハンドブック』国際農林業協力協会、『東南アジア樹木紀行』昭和堂、『京都 神社と寺院の森』『神仏の森は消えるのか』『由良川源流 芦生原生林植物誌』『京都の秘境・芦生』(ナカニシヤ出版)、『登山者のための生態学』『アニマルトラッキング』(山と渓谷社)、『土壌動物の世界』『カイガラムシが熱帯林を救う』(東海大学出版会)、『東南アジア林産物20の謎』『土の中の奇妙な生きもの』(築地書館)、『琵琶湖ハッタミミズ物語』(サンライズ出版)、『ミミズの雑学』(北隆館)、『熱帯林の恵み』(京都大学学術出版会)など多数。
訳書に『ミミズと土』(チャールズ・ダーウィン)『熱帯多雨林の植物誌』(W・ヴィーヴァーズ・カーター)(平凡社)。共著に、『土の中の小さな生き物ハンドブック』『落ち葉の下の小さな生き物ハンドブック』(文一総合出版)、『熱帯農学』(朝倉書店)などがある。
熱帯の森から
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