アジアの伝統染織と民族服飾
豊穣なる生活造形の世界
著:道明三保子
書店発売日:2021年5月1日
定価:3,000円+税
ISBN:978-4-87177-356-0
あらゆる民族には豊かな生活造形の世界が存在する。
人々はどのように素材を利用し、その地の風土と文化環境に合った染織・服飾を作り上げてきたのか。
東アジアからインド、ペルシャ、中央アジア。さらに中東からヨーロッパにかけて行き来してきた服飾・染織の世界を、現地でのフィールド調査、博物館における実物資料の分析と展示、文献の渉猟それぞれの方法によって進めた、アジアの染織・服飾文化研究の集大成。
目次
まえがき
Ⅰ 総説編
Ⅰ-1 服飾文化
Ⅰ-1-1 民族服飾序説
1.民族服飾の用語
2.民族服飾の調査・研究・展示
3.民族服飾研究の着目点
4.民族服の継承
Ⅰ-1-2 アジアの地域別伝統衣装
1.東アジア
2.東南アジア
3.南アジア
4.西アジア
Ⅰ-1-3 アジアの近代化と伝統服飾
1.アジアの近代化と洋装
2.民族服の自給自足体制の衰退
3.科学の発展と民族服
4.日本の洋装化
5.各国の例
6.伝統服飾の文化をいかに継承発展させるか
Ⅰ-1-4 アジアの被り物
1.東アジアの被り物
2.東南アジアの被り物
3.南アジアの被り物
4.西アジアの被り物
5.中央アジア・北アジアの被り物
6.中国の虎頭帽
Ⅰ-1-5 アジアの装身具
1.装身具の役割と素材
2.東アジアの装身具
3.東南アジアの装身具
4.南アジアの装身具
5.西アジアの装身具
6.中央アジア・トルクメンの装身具
Ⅰ-1-6 晴れの日の装い
1.赤・白・黒
2.最上の日常
Ⅰ-1-7 旅するビーズ 小さきものの壮大な旅路
1.ビーズの語源は祈り
2.交易品の花形に
3.古代日本には曲玉や臼玉が
4.アジアの多彩なビーズ
Ⅰ-1-8 カシミールショールとペイズリー文様
1.カシミールショールの歴史
2.ペイズリー文様の変化と西欧のファッション
コラム 文化学園服飾博物館
コラム 文化学園服飾博物館の国際交流
コラム ボタン博物館
Ⅰ-2 染織文化
Ⅰ-2-1 日本の藍・アジアの藍
1.日本の藍
2.アジアの藍
Ⅰ-2-2 刺繍の世界 華やぎ、そして祈る色と形
1.刺繍の分類
2.製作者と用途
3.刺繍の技術
4.刺繍の機能と表現の特色
5.デザイン
6.日本の刺繍
Ⅰ-2-3 全アジア・剌し子の系譜
1.日本・東北地方の剌し子
2.韓国のヌビ
3.インドのカンタ
4.中央アジアと西アジアの剌し子
Ⅰ-2-4 日本の絞り・世界の絞り
1.日本の絞り
2.世界の絞り
Ⅰ-2-5 東西の紫
1.西方の紫
2.貝紫
3.東アジアの紫
4.民族衣装の紫
Ⅱ 地域編
Ⅱ-1 東アジア
Ⅱ-1-1 日本のきものの特質
1.きものの特徴
2.きものに取り入れられた歴代の服飾
Ⅱ-1-2 縮緬の着物
1.縮緬の来た道
2.様々な縮緬 134
3.時代による好みの移ろい
Ⅱ-1-3 夏の着物 涼の美
1.単衣の着物
2.薄物仕立て
Ⅱ-1-4 更紗と日本人と
1.更紗とは
2.更紗の歴史
3.更紗の用途
Ⅱ-1-5 三井家の着物 和の感性が冴えわたる着物の世界の理想郷
1.江戸後期
2.明治・大正期
Ⅱ-1-6 清朝の宮廷衣装
1.宮廷の服飾制度
2.清朝の満漢併用
コラム 養蚕農家訪問記
コラム 製糸工場をたずねて
コラム久米島紬を織る人々
Ⅱ-2 東南アジア・南アジア
Ⅱ-2-1 タイ北部少数民族の衣装
1.タイ北部ヘの旅
2.民族衣装と民族意識
3.少数民族の民族衣装
Ⅱ-2-2 ラオスの民族衣装
1.多民族の国ラオス
2.民族衣装シン
3.ラオスの織物の文様と技法
Ⅱ-2-3 インドの染織
1.インドの染織文化
2.インドの染織品
Ⅱ-3 西アジア・中央アジア
Ⅱ-3-1 ペルシア絨毯
1.民族の誇り
2.都市の絨毯・遊牧民の絨毯
3.絨毯の織機
4.絨毯の素材
5.ペルシア結び・トルコ結び
6.絨毯の文様
Ⅱ-3-2 遊牧の民に魅せられて 松島コレクションから
2.遊牧民の生活環境
3.遊牧民の服飾
4.遊牧民の敷物
5.遊牧民の民族造形
Ⅱ-3-3 イスラムのヴェールファッション
1.コーランの教え
2.革命後のイランで
3.各地のヴェール
4.様々な風習
Ⅱ-3-4 イスラム文様への旅
1.モスクのタイル文様
2.イラクの工人たち
3.カシミールショールの文様の変貌
4.祇園祭の絨毯
Ⅱ-3-5 パレスチナの民族衣装
1.カワール・コレクションから
2.パレスチナの伝統的民族衣装
3.地域ごとの特色
4.民族衣装の今日
Ⅱ-3-6 ヨルダンの伝統衣装
1.カワール・コレクションから
2.イルビド地方の衣装
3.サルト地方の衣装
4.マアーンの衣装
Ⅱ-3-7 イエメン便り
1.イエメンの建築
2.女性のヴェール
3.女性だけのパーティー
4.男性の短剣と衣服
5.スーク
6.イエメンの銀細工
Ⅱ-3-8 アラブ男性の伝統的衣服
1.ケフィエ(頭布)
2.クンバズ(筒袖長衣)
3.シャルワール(パンツ)とシェリハ(帯)
4.アバ(コート)
Ⅱ-3-9 トルコの伝統衣装
1.トルコの歴史
2.宮廷の服飾
3.女性の伝統衣装
4.トルコの刺繍
5.憂愁の都イスタンブール
Ⅱ-3-10 ウズベキスタンの経絣と刺繍布
1.平山郁夫シルクロード美術館コレクション
2.ウズベキスタンの染織の歴史
3.刺繍布(スザニ)
4.経絣(アブル)と絹綿交織織物(アドラス)
5.経絣の民族衣装
Ⅱ-3-11 ササン朝ペルシアの宮廷衣装 ターク・イ・ブスターン浮彫りの調査
1.古代ペルシア文明と衣装
2.ターク・イ・ブスターン遺跡ヘの道
3.正倉院の染織の源流
4.帝王猪狩図の服飾文様
コラム 白瑠璃碗のふるさと
コラム 江上波夫先生とオリエント
Ⅱ-4 ヨーロッパ
Ⅱ-4-1 リヨンの絹織物
1.アジアからヨーロッパへ
2.リヨンの絹織物の歴史
3.キャヌー(絹織物工)とリヨンの庶民像、ギニョール
4.ジャカードの発明
Ⅱ-4-2 フランスの更紗
1.インド更紗に触発されて
2.洗練された文様
Ⅱ-4-3 ブルガリアの民族衣装
1.ブルガリア国立民族学博物館との交流
2.ブルガリアの民族衣装の伝統へ
コラム 色彩豊かなグアテマラの民族衣装
コラム 平山郁夫・美知子ご夫妻とシルクロード
特別寄稿「カシミールショールとの出会い」(平山美知子氏)
コラム 国際化時代に想い出すこと
あとがき
初出一覧
版元より
本書は、アジアの各民族が歴史の中で作り上げてきた染織・服飾文化の貴重な研究です。それぞれの地域が伝えてきた手仕事の美しさ、家族や住んでいる地域への愛着、自然や風土に調和した生活などを網羅的に紹介しています。この本の内容が、私たちの生活文化を考えるきっかけになればと思っています。
道明三保子(ドウミョウ ミホコ)
1942年生まれ。東京大学文学部美術史学科卒。同大学院人文科学研究科修士課程修了。
文化学園大学名誉教授。フランス政府給費生としてリヨン織物美術館で学ぶ。東京大学
イラク・イラン学術調査に参加。世界各地で染織史、服飾史の調査研究を続け、文化学
園服飾博物館で国内外の染織品の収集と展示を手がける。文化女子大学(現文化学園大
学)教授、放送大学客員教授、文化学園服飾博物館学芸室長、国際染織学会(CIETA)
日本代表委員、アジア民族造形学会理事、平山郁夫シルクロード美術館理事、大日本蚕
糸会評議員などを歴任。蚕糸功績賞受賞。現在、道明組紐教処長。
編著書に、『世界の伝統服飾』(分担執筆、文化学園服飾博物館)、『アジアの風土と服飾文化』(共著、放送大学教育振興会)、『西アジア・中央アジアの民族服飾』(分担執筆、文化出版局)、『三井家のきもの』(分担執筆、文化出版局)、『すぐわかる産地別染め・織りの見わけ方』『すぐわかるきものの美』(監修、東京美術)などがある。
アジアの伝統染織と民族服飾
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